なぜテニススクールでは上達しないか

 自動車の教習所に通えば、通常の運動神経の者なら誰でも車の免許を習得できる。にもかかわらず、テニススクールでは初心者はほとんど上達しない。そして、3年ほどで辞める事になる。スクールにはたくさんの上級者がいる。しかし、そうした者は部活動などで若い頃テニスをやっていた者ばかりであり、スクールで上達した者はいない。なぜ、この様な事が起こるのだろう?
 これは以前、書いた通り、スクールの練習時間が非常に短いからだ。スクールの練習時間は1週間にわずか90分であり、1年やっても70時間ちょっとである。プロの練習時間で言えば10日程で終わってしまう。これで上手くなるなら、スクールを辞めてツアーを回るべきだ。その人は間違いなくテニスの天才だからだ。
 しかし、問題はこれだけではない。スクールは実は教育機関としては全く機能していない。それは目的管理をきちんと行っていないからだ。組織が成果を上げるには、まず、目標が必要だ。スクールで言えば生徒にどの様なテニスをしたいかをたずねるべきだろう。生徒はナダルの様なテニスがしたいとか、フェデラーの様なテニスがしたいとか要求があるはずだ。しかし、こうした要求を調査するスクールを見た事がない。プレーヤのゴールはコーチしか知らず、そして、決してそれを教えてはくれないのだ。
 目標が決まれば次に必要なのは課題の抽出だ。現在の問題点を指摘し、どのようなプロセスで改善していくかを説明する。そして、ゴールの期限を決め、その期間内に成果を上げる事を目指す。進捗状況は定期的にチェックされ、問題があれば逐次改善がなされる。優れた組織はこうして運用される。
 しかし、この様な事をやっているスクールを見た事があるだろうか?練習に行けば、いきなりこれをやれ、あれをやれと指示される。その練習が何を意図しており、習得した技術が試合でどう使われるかは説明されない。結局、言われた通りに体を動かすだけであり、何も技術は身に付かないのだ。
 例えば、筆者の通うスクールでも、ある日の練習ではいきなり高い弾道のボールを打つ様に指示された。その日はほとんどの練習がいわゆるムーンボールに費やされた。そして、いきなりゲームに突入した。皆、ムーンボールばかり打たされたので、くせになってしまい、試合中もムーンボールを打ってしまっていた。そのせいで前衛に高い打点からボールを打ち込まれ、ボロ負けを喫した。それでも練習の目的は秘密のままである。なぜ、これをやったのかはコーチしか知らないのだ。
 結局、テニススクールでは自分が上達しているのかも現在どのレベルにいるのかも分からない。コーチが何を目的にしているかもさっぱり分からない。これで上達するならいきなりプロになった方が合理的である。
 では、なぜ、テニススクールはこの様な運営をされているのだろうか?これはスクールには上達のノウハウなど実は無いからだ。コーチの練習法は自分が部活動時代にやっていたものをコピーしているだけだ。自分自身、練習の目的や効果など知らないのだ。要するに何かやっている振りをしないとお金はもらえない。だから、練習っぽいものをやっているのがスクールの実態なのだ。
 実はこうした教育システムは企業でも同様だ。ほとんどのブラック企業が言われたとおり雑用をこなすだけで、その仕事がどの様な意味があり、自分のスキルの成長にどう関わっているのかも説明されない。要するに社員は使い捨てである。若い内だけ雑用をやり、後は辞めて欲しいのが企業の本音なのだ。従って、企業でもスキルアップは自分で努力しなければならない。会社の言いなりでは将来、頭打ちは確実なのだ。
 日本の組織は実は非常に効率が悪い。これはマネージメントがほとんど機能していないからだ。日本の組織は従来の作業を惰性で繰り返しているに過ぎない。それはテニスでも全く同じだというだけの事だ。例外的なのが工場で、生産性を上げるという目標の下、全社員が工程の改善に知恵を絞り、成果をチェックしながら無駄を省いてきた。だから、日本はこれほど豊かになったのだ。日本人が天才だから遊んでいても海外に勝ってきたわけではない。
 しかし、現在では工場はほとんどが海外に流出した。日本の強みは現在は消失したのだ。そして、上記の通り、サービス業では改善は全く行われていない。「すごいぞ日本」など笑い事である。日本の衰退はものすごい勢いで進行している。10年後には北朝鮮並みにまで国力は落ちるだろう。それは高齢者のほとんどが飢え死にする事も意味する。努力をしない者を神は助けたりはしない。今の繁栄は一時的なものだ。怠け者は地獄に落ちるのがこの世のルールなのだ。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック